<プロフィール> 1991年3月 大分医科大学(現 大分大学)医学部医学科 卒業 東京大学医学部付属病院 産婦人科学教室研修医、 愛育病院を経て、東京労災病院産婦人科医長、 東京厚生年金 病院産婦人科医長などを歴任
女性のトータルウェルネスを考えることをライフワークとし、婦人科医という立場から「女性の美しくありたいとの想い」に応えている。 現「霞ヶ関土居美佐クリニック(HP)」院長。
婦人科医・土居美佐先生による女性のための健康コラム。今回はつら〜い月経前症候群(PMS)についての後編です。その症状も人によってさまざまなPMSをどのように治療しているのか、女性としてぜひ知っておくとお役に立つ知識を土居先生に解説いただきます。 前回に引き続き、月経前症候群(PMS)のお話をしましょう。 今回はPMSの治療について。 PMSの大きな原因は前回お話しましたように、排卵に伴う女性ホルモンの大きな変動です。 エストロゲン(女性らしさ、若さをつかさどる女性ホルモン)とプロゲステロン(妊娠のためのホルモン)という2種類の女性ホルモンが排卵に伴って大きく変動します。特に排卵前にはほとんど分泌されていないプロゲステロンが排卵後に急速かつ大量に分泌されることに女性の心身が反応して種々の症状を引き起こすのがPMSです。 ですからPMS治療の大きな目標はこのプロゲステロンを分泌させないことです。排卵しない限りプロゲステロンは分泌されませんので、排卵自体をとめれば良いわけです。 具体的には、避妊目的に使われている経口避妊薬(低用量ピル)をPMSの治療に使用します。 低用量ピルは排卵をとめることで避妊の効果を得られる薬です。そして、この薬はPMSの症状も劇的に改善します。もともと避妊目的に作られた低用量ピルですが、現在は避妊以外の目的で女性に処方することが増えてきました。PMS以外にも子宮内膜症の治療、月経痛の緩和、月経不順・月経過多の治療などが代表的なものです。 排卵をとめることに対して心配に思われるかもしれませんが、今すぐの妊娠を望んでいない女性にとって排卵をとめることやプロゲステロンが分泌されないことは全く心配する必要のないことです。そのため、PMSの治療にも低用量ピルが使われるのです。 低用量ピル以外の治療法としては漢方薬も効果的です。しかし漢方薬の場合は排卵をとめるわけではないので、根本的な治療にはなりません。あくまでも症状の緩和がポイントになります。漢方薬と心身の相性がよければ(漢方では『証が合う』と言います)、かなり効果が期待できます。 そのほかの治療方法としては精神的な症状が強い患者さんには軽い安定剤のようなお薬も効果があります。 前回、PMSはストレスの強い人、生活習慣が悪い人、冷え性の人は症状が悪化しやすいとお話しましたが、ちょっとした工夫でも症状は緩和されます。 たとえば食生活もそのひとつ。PMSの症状で、食嗜(食べ物の好み)が変わる女性は多いのですが、特に「甘いものが食べたくなる」女性は要注意です。勢いで甘いものをたくさん食べると血液中の血糖値が急激に変化します。この血糖値の急激な変化は、いらいらや精神的な不安定をさらに悪化させる作用があります。甘いものをぐっと我慢して、ビタミン(特にビタミンB)やミネラルの多い食品を食べると血糖値の変動が緩やかになり、PMSの症状も軽くなります。簡単な方法なので本当かと疑われるかもしれませんが、これは事実なんです。ぜひ試してみてください。 食生活以外にも、生理前は頑張りすぎないで心身ともにリラックスできる方法(たとえばアロマセラピーやヨガなど)を生活に取り入れたり、夏でもぬるま湯のお湯に15分ほど入浴するなど心身の代謝をアップさせるような工夫もとても大切です。 最後に……PMSは悪い病気ではありません。排卵してプロゲステロンが分泌されること自体は正常な身体の営みなのです。しかし、その症状の変化、特に悪化している女性は、何かしらの心身の変調が背景にある可能性が高い、ということを忘れないでいただければと思います。