苦になるのは、さほど親しくない人と、1対1のときだけ
苦になるといっても、家族や親しい友人となら、平気で話せるのではないですか。それどころか、まったく知らない人、ときには大勢の人の前であっても、わりあい緊張せずに話しているのではありませんか。苦になるのは、それほど親しくない人と、1対1で話すときだけではないですか。こうした状態を、対人恐怖症といいます。かつては男性に多かったのですが、近ごろでは女性にも増えているそうです。対人恐怖症は、日本人に多く、欧米人には極めて少ない症状なのです。
他人の目が気になって話せない
対人恐怖症になる時期は、思春期からが多いようです。小さいときから内気な性格だった人がなりやすいのですが、ときにはそれまで明るく積極的だったという人もなります。多くの人は思春期を境に、自分という存在を意識するようになります。小さいときは、あまり人の目が気になりません。それが思春期を境に、自分は相手からどう思われているか、相手は自分を嫌っているのではないか、相手によく思われたい、などの気持ちが強くなるのです。それらがプレッシャーになって、話すのが苦になるのです。欧米人に対人恐怖症が少ないのは、個人主義が浸透し、個性を尊重する社会風土があるため、他人の目を気にせずにすむようです。
きっかけは失敗体験
ふつうに話していた人と、あるときを境に、急に話せなくなることもあります。この場合のあるときとは、「失敗」したときであることが多いのです。失敗したことで、相手から嫌われたのではないかとの心配がプレッシャーになるからです。ここ数年、女性の就職氷河期が伝えられています。就職試験の失敗から、対人恐怖症になる人も少なくありません。5度や10度の不採用通知が届くのは、当たり前の時代です。社会が求めるのは、失敗しない人ではなく、失敗にめげず、チャレンジし続ける人ではないでしょうか。
遺伝より性格が大
滅多に失敗しない、きまじめな性格の人が、対人恐怖症になりやすいようです。きまじめな性格であっても、よくしゃべる家庭で育った人には、対人恐怖症が少ないそうです。だからといって、遺伝ではありません。性格によるところが大きいのです。家族や親しい人には、すでに一度や二度の失敗は知られているはずです。新たな失敗をしたところで、今更相手の評価など、気にする必要はありません。ということは、仲良くなりたい人には、むしろ大いに自分の失敗を知ってもらうほうがいいかもしれませんね。ちょっと極論ではありますが。
イメージ療法で克服する
さまざまな心の病気のなかで、対人恐怖症は最も治しやすいそうです。治療法のひとつに、イメージ療法があります。まず、どういう状況のときに苦痛になったかを思い出します。苦痛になった場面をひとつひとつイメージし、その状況に慣らしていきます。続いて課題を与え、イメージ上の会話のなかで、うまく対応できるようにしていきます。相手の視線をさけない、問いかけには必ず相づちをうつ、などです。ここまでできたら、実際に会って話します。少しだけ苦手な人からスタートして、自信がついたら、徐々により苦手な人へと広げていきます。
身体的症状を伴うときは、精神の克服だけでは足りない
対人恐怖症は、いわゆる「人見知り」のほかに、身体の異変を伴うものもあります。顔が赤くなる、手が震える、大量の汗が吹きだす、などです。そのために、人と接するのが苦痛になっていることもあるのです。後者のときは、ほかの病気が原因になっていることもあります。その場合は、精神面での対人恐怖を克服しただけでは、症状はおさまりません。身体の症状を伴うときは、一度、かかりつけの医師または心療内科の医師に相談してみたほうがいいかもしれません。
重い病につながることも
敏感関係妄想という病気は、対人恐怖症によく似た症状があらわれます。みんなが自分の悪口を言っているといった被害妄想的な状態になって、人前にでられなくなるのです。敏感関係妄想は、精神の重い病につながる危険性もある病気です。体の症状を伴わないときでも、すべてを対人恐怖症と決めつけず、精神科や心療内科で診てもらったほうがいい場合もあります。
気になる症状については、一人で判断をせず、お近くのクリニックまたは病院で検査をして下さい。専門家の意見や判断をあおぐことをおすすめします。
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