試験前にどうして?
某女子大学に通うA子さん(19歳)は、試験前の胃痛に悩む一人です。最初に痛みを感じたのは、大学1年生の期末試験でした。友人とノートの貸し借りが始まった頃は、胃がキリキリする程度でしたが、試験当日の朝には激痛に変わり、耐えながら試験を受けました。ところが、試験が終わってみると、痛みは嘘のように消えてしまったのです。「それ以来、試験前になると胃が痛むんです。いずれ、病院に行こうって思っているんですが・・・」とA子さん。
プレッシャーで胃が…
試験だけでなく、試験の結果を待っている時、大勢の前でスピーチする時、就職面接や内定が決まるかどうかの時など、プレッシャーがかかる時に限って、胃が痛む人がいます。いずれも、「そのこと」が気になり始めたあたりから痛みが始まり、「そのこと」に近づいてくるにしたがって、痛みが増していきます。すべてが終わったら病院で診てもらおうと思うのですが、「そのこと」が終わってしまうと、痛みが消えてしまうのです。
ワクワクドキドキの一人暮らし
心(脳)と胃とは、体の中でも離れた場所にあるのに、どうしてプレッシャーがかかると胃が痛むのでしょう。一見、まったく別々に思える心と胃ですが、実は、二つは太いパイプで結ばれた、切っても切れない関係があるのです。サルを使った、こんな興味深い実験を紹介しましょう。サルは水に浸かるのが大嫌いで、水に触れただけで強烈なストレスになります。それを承知の上で、サルを水に入れたところ、2時間ほどして胃に出血が見られ始めたのです。
サルも胃が痛くなる!?
このサル実験の結果が、人間にすべて当てはまるわけではありませんが、強烈なストレスを感じ続けていると、胃に障害が起きることがわかりました。サルにとっての水攻めが、私たちにとっての試験やスピーチだと考えてもよいのではないでしょうか。では、このようなことがなぜ起こるのか、見てみましょう。胃というのは、自律神経にコントロールされています。自律神経というのは、名前のとおり、自分の意志とは全く関係なく働いています。心臓が動くのも、血液が流れるのも、胃が動くのも自律神経のおかげなのです。
コントロール不能が胃痛に
胃の仕事というのは、食べ物を消化し、腸へ送ることです。消化に必要な胃液を出すのは、自律神経の中の一つ、副交感神経の役目で、食べ物を腸に送るために胃を動かすのは、交感神経の役目です。副交感神経と交感神経は対極にあり、一方が働くときは、もう片方は静かにしています。胃で例えると、食べ物が入ると、まず、副交感神経が動いて消化が始まり、その後、交感神経が働いて、食べ物を腸に送り込みます。ところがストレスで自律神経のバランスが崩れて、副交感神経だけ働くと、食べ物が入っていないにもかかわらず、胃液だけがどんどん分泌され始め、胃液が胃そのものを溶かし始めてしまいます。その結果、胃に炎症がおき、痛みが起こるのです。
病院で診てもらうと
こうした精神的なストレスから生まれる体の不調を、医学的には、「心身症」と呼んでいます。症状はあるのに、検査で原因が見つからないケースと、実際に出血や炎症があり、その原因がストレスと考えられるケースがあります。胃に関する心身症は、「胃神経症」、「上腹部不定愁訴症候群(NUD)」、「慢性胃炎」、「胃潰瘍」などがよく知られています。診断や治療は心療内科という科で進められ、胃そのものの治療だけでなく、精神面でのケアもあわせて行っていきます。
心配しないことが第一の予防
心身症になりやすい人の特徴は、とにかく「心配性」気質であるということ。だから、心配しないように心を持っていくことが、第一の予防法です。とはいっても、気になって仕方がないというのは、一種の「クセ」ですから、すぐに直せといわれても、それは無理というもの。そこで、気になり始めたら、次のように、繰り返し思ってみるとよいでしょう。「心配したからといって、事態が好転するわけではない」、「心配したからといって、事態が悪くなるわけでもない」と。 |