医療保険から医療機関に支払われる診療報酬(※1)は、2年に1回のペースで改定されます。かつての診療報酬改定は、改定前よりも単価を引き上げるプラス改定がほとんどでした。しかし、最近は国の財政が厳しいこともあって(※2)、医療費の削減ばかりを目的としたマイナス改定が続き、長年築いてきた医療社会資本を根底から崩し、それが患者さんに提供される医療サービスの質にも暗い影を落としています。

2002年度の診療報酬改定では、再診料(2回目以降の受診の際に支払われる診療報酬、初回受診の場合は“初診料”が支払われる)を通院回数に応じて下げていくという仕組みが導入されました。例えば診療所の場合、月3回目までの再診は810円ですが、4回目以降の再診は半分以下の370円となりました。つまり、牛丼屋のリピーターが牛丼を注文すると月3回目までは400円であったのが、4回目以降は半額の200円になるのと同じことです。これは患者さんが頻繁に通院する整形外科をターゲットにした政策だったようで、国は、何回も通院した場合の診療報酬を下げれば、医療機関は患者さんの通院回数を減らすだろうと考えたわけです。でも、患者さんは、「この間と同じように先生に診てもらって薬を出してもらったのに、どうしてこの間よりも安くて済んだのだろう?この間は病院が計算を間違えたのかな?」と不思議に思いますよね。医療不信につながる可能性だってあります。ほかにもいろいろな問題が出て、この仕組みは導入から1年余りで廃止されました。
※1)診療報酬=医療費。診療報酬点数表というリストによって、個々の診療行為ごとの値段(診療報酬点数)が定められている。このうち3割を患者が自己負担として病院窓口で支払い、残り7割は医療保険者(国民健康保険、健康保険組合)から直接医療機関に支払われる。
※2)日本の医療費(約30兆円)は、医療保険料、患者負担、公費(税金)で賄われています。
直近の2006年度の診療報酬改定では、リハビリテーションが大きな問題になりました。リハビリテーションの医療保険の適用(診療報酬の支払い)について期限が設けられたのです。どの病気かによって違いますが、脳卒中などの脳血管障害の患者さんの場合は「180日まで」とされ、180日以降、例えば181日目に行われたリハビリテーションには保険が効かなくなってしまいました。日本では、保険診療と自由診療(この場合は181日目からのリハビリテーションが該当します)を併用する、いわゆる「混合診療」は禁止されていますから、患者さんはリハビリテーション以外の診療行為も含む、医療費全額を自己負担しなければならなくなります。もちろん「180日」でリハビリテーションを打ち切ることについて、「180日あれば完治する」といった医学的根拠があるわけではありません。医療費を削減するための場当たり的な政策なんです。先にお話した再診料と同じように、これについても整形外科の先生方やリハビリテーションを受けている患者さんたち、マスコミなどが騒いだ途端、いろんな例外を認める方針転換をしました。ならばなぜ180日としたのか、なにかデータがあるならいいのですが、結局、患者さんのことなど考えていないのですよ。