安定的に製品が供給されるかという面での不安もあります。薬の製造ラインは一度製造を始めたら目標量の製造が完了するまで止めることができないんです。医薬品という特性上、それまで製造していたものと違う製品をつくり始める時には、製造ラインを洗浄しなければならないんです。ですからA剤を1,000錠つくった後、B剤の製造をしている途中で、「A剤が足りないから至急追加製造してください」となっても、B剤の製造が終わるまでは取りかかることができないんです。製造ラインを何本ももっている大手メーカーならほかのラインで製造することも可能ですが、そうでなければ「このジェネリック医薬品を処方して欲しい」と医師が処方せんを出しても、市場にないということがありえるんですよ。
厚生労働省はまた、日本におけるジェネリック医薬品の市場シェア(数量ベースで約17%)が低いので、これを欧米並みの水準(アメリカ53%、イギリス55%、ドイツ41%)まで引き上げる必要があるといっていますが、日本と欧米では制度も環境も違うんです。
日本の医師は処方せんに薬の商品名を書く場合が多いのですが、アメリカの医師は主成分名(ジェネリック名といいます)を書くんです。ですから患者さんもジェネリック医薬品のことをよく理解しているんです。これに対して日本の患者さんは、薬の名前よりも、色や形で認識している方が多いんです。
4月の診療報酬(医師の技術料)の改定に向けた議論では、現在の処方せんの様式を変更して、『ジェネリック医薬品への変更不可』という欄に医師のサインや押印がない限り、処方せんを受け取った薬局は原則、ジェネリック医薬品を出すようにしてはどうか、という案が出ています。
ところが患者さんは「Aという薬を出してください」ではなく、「この間出してくれたオレンジの薬を出してください」とか、「紫のキャップの軟膏を出してください」などと言ってきます。ですから医師に確認せずにジェネリック医薬品に変えることができるという仕組みになると、「オレンジの薬を出してといったのになぜブルーの薬なのか」ということが起こり、診察室で医師と交わした会話と実際の処方とのつじつまが合わなくなる恐れがあるのです。
もっとも問題なのは、「この間もらったオレンジの薬はお腹がくだったので、違う薬にしてください」などと患者さんから要望されるケース。薬局の判断で出された薬が、医師にやめて欲しいと頼んだオレンジの薬だったら患者さんはどう思うでしょうか。おそらく「あの先生は信頼できない」と思うのではないでしょうか。

わたしをはじめ、医師がみなジェネリック医薬品の導入を悪いといっているわけではないんです。患者さんの自己負担が軽くなるのは確かによいことですから。
ただ、普及の前提条件として、厚生労働省は、ジェネリック医薬品について、とくに主成分が同じだからといって効き目まで先発医薬品と同じであるとは限らないことをきちんと広報する、製品の供給が途切れないような対策を考える、などのインフラ整備にまず取り組むべきです。
[2008.2.13公開]

医師/簡野晃次
医療法人社団 友輝会 エルクリニック 理事長
医療法人社団 若草会 横須賀中央眼科クリニック 理事長
医療法人社団 スペクトラム会 東京血管外科クリニック CTO
―経歴―
昭和63年3月:日本医科大学卒業
昭和63年6月:日本医科大学付属病院形成外科入局
平成7年6月:西新井皮膚科形成外科院長就任
平成18年10月:医療法人社団友輝会エルクリニック理事長
平成19年4月:医療法人社団若草会横須賀中央眼科クリニック理事長
平成19年6月:医療法人社団スペクトラム会東京血管外科クリニックCTO